SSブログ

下りもの [新潟市内散策]

DSCF7855_640.jpg

 

土曜日の夕方、新潟駅南口で佐渡の薪能をやっていました。
佐渡は、能が盛んな土地です。
今でも30を越える能舞台があり、かつては全島で200以上もあったそうです。
世阿弥が流された縁(えにし)でしょうか。

世阿弥は足利義満の庇護を受けましたが、音阿弥を重用する義教の代にいたり弾圧を受け、ついには佐渡に流されています。
佐渡の庶民の間で能が盛んになったのは、江戸初期の佐渡奉行大久保長安の影響であるというのが定説のようですが、世阿弥との縁を思うほうが私の好みです。

大久保長安は能楽師出身であったこともあり、能楽師一行をつれて上方から佐渡へ渡ってきます。
能楽師たちが佐渡に土着したのが始まりだそうです。
世阿弥は佐渡に何の足跡も残さなかったのでしょうか。

いずれにしても、文化中心地からの「下りもの」が地方に温存される例を見るようです。

DSCF7857_640.jpg

 

「下りもの」で思い出しました。
母からの京土産の「生しば漬け」があったのを思い出してしまったのです。
冷蔵庫から取り出して、さっそく開けてみます。

さすが京つけものです。
これだけで歴史を感じてしまいます。

壇の浦合戦後、大原の寂光院に隠棲する建礼門院を慰めるために里人が地元の紫蘇を使った漬物を献上したのが始まりであり、建礼門院から「紫葉づけ」との名を下されたという由緒話を思い出します。
そのついでに、平家物語の建礼門院を訪ねる後白河法皇の「大原御幸」など思い出してしまいます。

DSCF7832_640.jpg


しば漬けだけでは寂しいので、これに手をつけます。

震災後の東北経済復興の「応援買い」です。
福島県は二本松の酒「奥の松」です。

いにしえの平安京の宮人が枕詞の世界として憧れた東北の景色が思い浮ぶようなネーミングですね。

めずらしく蔵付酵母で醸された美味しいお酒でした。

DSCF7829_640.jpg

 

ついでに岩手の菊の司酒造の「七福神」です。
私に出来る応援はこんなものですが、精一杯頑張って飲みます。

追記
・入江敦彦の「京都人だけが知っている」で、著者は「生しば」と「すぐき」だけが京つけもので、あとは「京風つけもの」だと力説していました。

・玉村豊男編「酒宴のかたち」を読んでいたら、世阿弥を佐渡に流した足利義教の最後の様子が載っていました。
酒宴中に赤松満祐の手で暗殺されています。

そのタイミングは「猿楽三番盃酌五献の時分」と記されています。
式三献が終わり、御湯漬が香の物ともに供されたあと、酌は四献、五献と進みます。
宴は形式ばった式三献と場所も替わり、猿楽(能)を見ながらのくつろいだ席となっています。

御湯漬に供された香の物の中に「しば漬け」は入っていたのか。
そのとき猿楽を演じていたのは義教に重用されていた音阿弥であったのだろうか、であれば音阿弥は目の前で庇護者が殺害されるのを目撃したのだろうか。
・・・といろいろ想像してしまいます。

京都人だけが知っている

京都人だけが知っている

  • 作者: 入江 敦彦
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2006/02
  • メディア: 文庫

酒宴のかたち (酒文選書)

酒宴のかたち (酒文選書)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: TaKaRa酒生活文化研究所
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本

 


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

芸妓の舞水の引かない田 ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。